映画『東京暮色(とうきょうぼしょく)』
小津安二郎監督作品
10月12日、NHK BSプレミアムで放送された小津安二郎監督の『東京暮色』を見てみました。
昭和32年(1957年)に公開され、小津安二郎監督にとって最後の白黒作品となった映画だそうです。
山田五十鈴さんが出演した唯一の小津作品であり、
そして、有馬稲子さんにとっては初の小津作品でありました。
映画冒頭から昭和がにじみ出た町並みが映し出されました。
自分の生まれる前の東京の町並みです。
「どこらへんだろうか?」
映画のセリフから、牛込・雑司ヶ谷・五反田が出てきます。
昭和の風景、町並みも家の中もお店の雰囲気も、なんだかとっても落ち着く感じです。
祖父母、父母が暮らし、生活していた情景が目に浮かんでくるようです。
どことなく、笠智衆さんが祖父に似ていて、山田五十鈴さんが祖母に似ていることもあるからでしょうか。
セリフの言い回しもゆったりしていて、そこもいいんですよね。
懐かしい杉村春子さん、山村聰さん、浦辺粂子さんや中村伸郎さん、長岡輝子さん、桜むつ子さんも出演されていました。
みなさん、とてもお若くて。。。
桜むつ子さんの初老の頃からの姿しか知らなかったので、若い頃は妖艶な雰囲気を醸し出す美人さんだったことを知ることができました。
それにしても、原節子さんは、なんともまあ 美人さんなんでしょう。
綺麗なうえに品がある。
女性の私でも「ほれてまうやろー」の絶世の美女。
町並みや俳優さんたちを見て懐かしんでいる気持ちとは裏腹に、
映画の内容は、とても暗いものでした。
”不倫・離婚・妊娠・中絶・死” と、なかなか重いテーマが織り混ざっていました。
現在の有馬稲子さんからは想像もできないほどの暗い表情。
重たいものを肩にずっと背負った感情が上手でした。
若いのに、疲れている。
世間に背を向けている感じ。
キュートで、小悪魔的で綺麗。
映画『東京暮色』を見て、一番印象に残ったのは、有馬稲子さんでした。
山田五十鈴さんの印象も変わりました。
綺羅びやかな着物と白塗りのお化粧のイメージが強かったのですが、化粧っ気のない素朴な感じのほうがとても良かったですし、苦労を乗り越えたが、これからもずっと苦労を背負うであろう哀愁の姿が印象的でした。
重く暗い、寂しく悲しい場面でもバックに流れる音楽が、なんか合っていない明るい感じの昭和っぽい曲を流すのかが気になりましたけど。
あまりにも暗い内容だから、曲だけでも明るくしたのでしょうか。。。
小津安二郎監督のプロフィールを見てみたら、
生年月日が1903年12月12日で、
没年月日が1963年12月12日で、
生まれた日と亡くなった日が同じ日なんです。
そういう人もいるのですね。
60歳没で、ちょうど還暦を迎えた日に亡くなるなんて。。。
胸に染み入る奥の深い映画でした。
母の愛とは最上のもので、欠けて寂しいと負のループに迷い込んでしまう。
寂しい気持ち……「もう、どうでもいい」という気持ちと、「誰か助けて」と叫んでいる気持ちが交互している時なんだと、自分の経験からそういうふうに感じていました。
小津安二郎監督作品をもっと知ってみたくなりました。
映画に出てくる、とても気になった 踏切の横に立っている看板